不動産鑑定士の藤田です。
去る7月1日に、国税庁より令和3年度相続税路線価が公表されました。
少し前のお話にはなりますが、今回はこれについて書かせて頂こうと思います。
まず、「相続税路線価」とは何かというご説明からですが、
相続税の申告の際、相続税が課税される対象になる土地の財産価格を計算する基準となる価格(単価)で、道路毎に路線価が付けられています。
毎年国税庁より任命された不動産鑑定士が各エリア毎に10人前後のグループを組み、地価動向等について検討を重ね、1月1日時点の路線価が決定されます。
私は現在、横須賀市エリアの担当に任命されております。不動産鑑定士が業務を担当する主な公的指標としては、
・地価公示(毎年1/1時点における価格、3月に公表)
・相続税路線価(毎年1/1時点における価格、7月に公表)
・地価調査(毎年7/1時点における価格、11月に公表)
の三つがあり、相続税路線価が最も直近で公表された公的指標となっております。
相続税路線価は、概ね近隣の地価公示価格の80%程度の水準に設定されております。
以下にて神奈川県内の動向について以下、述べさせていただきます。
神奈川県全体としては住宅地の平均はマイナス0.6%となり、下落に転じました。
商業地の平均もプラス0.1%。前年のプラス2.7%から大幅に上昇率が鈍化しました。
各税務署管内の最高路線価の上位5地点については以下のとおりです。
【令和3年の神奈川県内各税務署内の最高路線価の変動率順位(価格は1平方メートル)】
1位 横浜市神奈川区鶴屋町2丁目(鶴屋橋北側)
路線価:2,920千円(前年比+7.0%)
神奈川税務署管轄地点
2位 横浜市西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り
路線価:16,080千円(前年比+3.1%)
横浜中税務署管轄地点
3位 厚木市中町2丁目 本厚木駅北口広場通り
路線価:860千円(前年比+2.4%)
厚木税務署管轄地点
4位 川崎市川崎区駅前本町 川崎駅東口広場通り
路線価:4,190千円(前年比+2.3%)
川崎南税務署管轄地点
5位 横浜市鶴見区鶴見中央1丁目 鶴見駅東口広場
路線価:1,140千円(前年比+1.8%)
鶴見税務署管轄地点
6位 横浜市旭区二俣川2丁目 二俣川駅南口駅前通り
路線価:570千円(前年比+1.8%)
保土ヶ谷税務署管轄地点
※各税務署の管轄毎の最高路線価という性質上、話題が商業地に限定されてしまう点をご了承下さい。
上昇率で県内トップに立ったのは、前年2位だった横浜駅周辺の「鶴屋橋北側」で+7.0%。JR横浜タワーからデッキで直結する「鶴屋町ビル」が昨年6月に開業されており、引き続き好調です。しかし前年のプラス25.2%と比較すれば上昇率は大幅に鈍化しており、新型コロナウィルス感染症による集客力の低下は否めないという結果になりました。
2位は、前年トップであった横浜駅西口バスターミナル前通りでプラス3.1%。1平方メートルあたりの価格は1,608万円で全国でも3位の高水準です。鶴屋町ビルと連絡する形で同時期に「JR横浜タワー」が開業し商業店舗や企業の集積が進み、「横浜の顔」として高いステータス性を維持していることが地価にも反映されています。
上昇率3位は、「本厚木駅北口広場通り」で+2.4%。近年、上位は横浜市・川崎市が独占していましたが、「2021年 LIFULL HOME'S住みたい街ランキング(首都圏版)」において本厚木駅は、借りて住みたい街第1位・買って住みたい街第3位にランクインされております。新型コロナウィルス感染症の影響によるテレワーク需要が高まった結果と考えられます。
全般的な傾向としては、横浜・川崎エリアは概ね上昇傾向(ただし上昇率は鈍化)、相模原市は横ばいとなりました。
一方で、「横須賀中央駅前通り」「鎌倉駅東口駅前通り」「藤沢駅南口広場通り」は下落に転じており、本厚木と同じ都心からやや離れた都市でも明暗が分かれる結果となっています。
東京オリンピック・パラリンピックが終わり、この先どのようになるのか。
新型コロナウィルス感染症も収束せず、別の指標では横浜中華街のあるエリア周辺一帯の地価は下落が非常に大きいという結果が出ております。
11月に公表予定の地価調査価格や来年3月に公表予定の地価公示価格も注目されますが、引き続き注視していきたいと思います。
株式会社あかつき不動産サービス
不動産鑑定士・宅地建物取引士・行政書士 藤田勝寛