昨今の慢性的な人手不足により、自社の業務を他の事業者に外注するケースが増えています。
他の事業者に外注することによって、社会保険料を含む人件費という固定費の削減が図れたり、自社の従業員をコア業務に充てることができる等経営上のメリットが大きく、また税務上においても消費税の課税仕入れとなり消費税の納税額が減ったり、源泉徴収の事務負担がなくなったりといった大きなメリットがあります。
一方で税務調査では、この他の事業者に支払った経費が外注費なのか給与なのかが問題となる事例が多く見受けられます。税務調査により外注費としたものが給与と指摘されてしまうと、源泉所得税や消費税の追徴や加算税や延滞税等のペナルティも課せられます。
そこで、今回は外注費と給与の税務上の判断基準などについてご紹介します。
【判断基準】
事業者とは、自己の計算において独立して事業を行う者をいいます。
外注費か給与かの判断基準は、国税庁の法令解釈通達に示されており、これらを総合勘案して判定するものとされています。
(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束
(業務の性質上当然に存在する拘束を除く)を受けるかどうか
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督
(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く)を受けるかどうか
(4)まだ引渡しをしていない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの
権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか
(5)材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているかどうか
【判例】
(1)塾講師に対して支払った金員が給与とされたケース・・・
塾講師基本契約書の約定により、指導時間や指導スケジュールに従い役務の提供を
行うものであったこと、時間数に応じた金員の支払いであったことから給与として
の性質を有するものであることは明らかであるとされた事例
(2)塗装工事業者に対して支払った金員が給与とされたケース・・・
塗装工事業者は確定申告を行っていることから自己の計算において事業を行っている
と主張したが、業務に要する負担がなかったこと、かつ塗装工事業者が休む時には
代替員を手配していなかったことから、費用負担や危険負担がなかったとして給与
であるとされた事例
【外注であった場合でも…】
外注費であった場合は原則源泉徴収の必要はありませんが、所得税法に規定する源泉徴収が必要な報酬・料金等に該当した場合は源泉徴収が必要となります。(講演料やデザイン料、外交員やトレーナー等)
また、令和5年10月から始まるインボイス制度下では、外注であっても適格請求書発行事業者でなければ消費税の課税仕入れとすることはできません。
外注費か給与かの税務上の判断は非常に難しく、給与とされた場合のデメリットが非常に大きいものです。
判断に迷うケースがありましたら、朝日税理士法人の担当者にご相談下さい。
(文責:関内本店 飯野和美)