1.財産債務調書制度とは?
財産債務調書制度は、平成27年度税制改正で富裕層に資産状況の提出を求める「財産債務明細書」の提出制度として創設されました。
2.提出要件(改正前)
所得税等の確定申告書を提出しなければならない方または一定の所得税の還付申告書を提出することができる方で、次の1および2のいずれにも該当する方は、財産の種類、数量および価額ならびに債務の金額その他必要な事項を記載した「財産債務調書」を翌年3月15日までに所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
≪提出義務≫
1.その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超えること
2.その年の12月31日において財産価額の合計額が3億円以上、または有価証券などの資産価額の合計額が1億円以上有すること
なお、相続開始の日の属する年(相続開始年)分の財産債務調書については、相続人等は、その相続または遺贈により取得した財産または債務(以下「相続財産債務」といいます。)を記載しないで提出することができます。この場合において、相続開始年分の財産債務調書の提出義務の判定は、財産の価額の合計額から、相続開始年に相続または遺贈により取得した財産の価額の合計額を除外した金額によります。
財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」または時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。
財産債務調書の提出がある場合には特典があり、また提出がない場合には、ペナルティがあります。
3.財産債務調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置
財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載がある財産または債務に関して所得税等・相続税の申告漏れが生じたときであっても、その財産または債務に係る過少申告加算税または無申告加算税(以下「過少申告加算税等」といいます。)が5パーセント軽減されます。
4.財産債務調書の提出等がない場合の過少申告加算税等の加重措置
財産債務調書の提出が提出期限内にない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産または債務の記載がない場合に、その財産または債務に関して所得税等の申告漏れが生じたときは、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5パーセント加重されます。
5.令和5年改正内容
令和5年分以降は、改正前の提出義務者に加え、「その年の12月31日において財産価額の合計額が10億円以上の者」も、財産債務調書の提出義務者となります。
令和4年分まで | 令和5年分以降 | |
提出義務者 |
下記のいずれにも該当する人 ①所得合計2,000万円超の人 ②財産3億円以上または有価証券 1億円以上を有する人 |
・左に該当する人 ・所得にかかわらず、10億円 以上の財産を有する人 |
提出期限 | 翌年3月15日 | 翌年6月30日 |
また、税務署は海外当局から入手した日本人の海外口座を元に申告漏れがないかを確認しています。実際に、税務署から海外の預金の利子の申告漏れを指摘され、過去5年間の申告、期限後に財産債務調書の提出を行い、5%増しの加算税を納付するに至った例もありますので、海外の財産についても注意が必要です。
6.終わりに
改正後の提出要件により、新たに提出義務が発生する場合もあります。ご不明な点は、朝日税理士法人の担当者までお問合せください。
(文責:小田原事務所 庄司真弓)