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朝日だより

株主総会のお話

2023年03月17日 朝日司法書士法人

会社で一番偉いのは誰か?
社長でも会長でもなく株主である、ということは結構知られている知識かと思います。
但し、筆頭株主や100%保有のいわゆるオーナー株主ならまだしも、1株しか持っていない株主となると果たして偉いのか分からなくなりますが。
米国のイーロンマスク氏がTwitter社を買収したニュースがありました。世間的に敵も多い同氏は、ネット投票で過半数の支持を得られなかった場合はTwitter社の代表を降りる、と宣言して結果、過半数の支持を得られず代表をやめることになりました。
このニュースを聞いてどういう感想を持ちますか?
せっかく買収したのにやりたいことをさせてもらえなくなって残念、とかTwitter社が今までどおりに運営できることになりよかったと思った人・・・浅いです!
冒頭で言いました。会社で偉いのは株主であること。社長や会長といった代表者ではないことを。今回は買収により会社を取得したということはマスク氏が大多数(100%かは不明)の株式を保有することになったということです。つまりTwitter社で一番偉い地位を得た訳です。よって、例え代表の座を降りることになっても彼にとって大した問題ではありません。
自分が代表(取締役)でなくとも、自分の意向に沿う代わりの人物を代表に選任すればよいのです。取締役等役員の選・解任権は株主総会にありますので、そこで絶対的多数を有する株主ならば自分の自由裁量で役員を選任・解任できてしまいます。株主が一番偉いというのは、この株主総会における決定権、支配権があるからとも言い換えることができます。

そんな株主総会ですが、その開催については会社法により毎年の定時総会が義務付けられています。つまり年に1回は必ず開催しなければなりません。ところが、上場企業の様に①毎年一定の時期に定時総会を開催している会社②開催を省略して各種決議をしている会社、③開催もしていなければ決議もしていない会社とあるのが実状です。
②はいわゆる「みなし決議」と言い、法に規定される手順に沿っていれば開催の省略が可能です。但し、株主間で賛否が分かれる議題があるときは不可であり、株主が少数で異論が生じない会社でなければ利用できません。
問題は③です。会社法では株主総会開催を義務付けておりますので、法令違反は免れません。
しかし、家族経営会社のように、株主相互間の意思疎通が十分に取れており、経営が円滑にすすめられているうちにおいては実質的な問題は生じないので何もしないでここまでやってきたというのが現状のようです。確かに、小さい会社にも法に沿った上場企業の様な形式を求めるのは酷かもしれません。例えば、夫婦二人だけの株主構成の会社において、「議長は定刻通り開会を宣言し・・・」という株主総会を行なうのはおかしいですね。
但し、開催していないというのは問題であり、法令違反と言われないためにも次のような提案をしてみます。
夫婦二人だけの株主構成の会社があるとします。
とある日曜日の夜、社長である夫が「昨日、税理士から決算の報告書をもらったけど、前期より売り上げ下がったみたい。厳しいなぁ」とビール片手に妻に話し、妻は「じゃああなたのお酒の本数を減らさないとね」と答えた日常の会話があったとする。
これを株主総会とみなせる場合も十分あると考えます。
株主全員出席による場合は法定招集手続がなくても決議が有効であるとする判例があるのでここには手続上の瑕疵はなく、税理士の決算書に対し妻から異論がないので決算承認決議とみなす。この会話を利用し、この日時を株主総会開催日、開催場所は自宅リビング、議案は決算承認―として株主総会議事録を後日作成すれば定時株主総会を行ったと言えます。
つまり、形式ばった面倒なものでなくても、この程度でも可能な場合があるのです。
一般的に、法に沿った株主総会を開催しないと株主総会決議取消しの訴え等で否定される可能性があるので、主催側は気を遣うものですが、この様なものも株主総会になりますよというお話です。どうぞご参考に。

(朝日司法書士法人 山口 亮二)

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