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朝日だより

簡易とはいえ難しい? 消費税簡易課税制度(朝日税理士法人だよりVol.218)

2023年05月01日 朝日税理士法人

【消費税簡易課税制度】

2期前の課税売上高が5,000万円以下の事業者(一部例外有)は、消費税の申告において簡易課税制度を選択することができます。簡易課税制度とは、課税売上高に対して、業種に応じた一定の割合を掛けることで、納税額を計算する方法です。計算に使用するみなし仕入率は原則として以下のようになっています(高い方が納税額は少なくなります)。

・第一種事業(卸売業)90%

・第二種事業(小売業)80%

・第三種事業(製造業等)70%

・第四種事業(飲食その他の事業)60%

・第五種事業(サービス業等)50%

・第六種事業(不動産業)40%

 「売上に割合を掛けるだけなの?簡単でいいね」と思うところですが、実は意外に難しいところもあるのです。

 

【事業区分の判断】

業種によってはどの事業区分に該当するのかの判断が細かいケースがあります。下記に例を挙げてみました。

●飲食店

・店内での飲食、出前 ⇒ 四種

・店内で製造した食べ物を店頭で一般消費者に販売 ⇒ 三種

・仕入れた商品を店頭で一般消費者に販売 ⇒ 二種

 ちなみに、店舗でのお惣菜の作成、ウナギを捌いて串に刺すなどは製造に該当するので三種。食材を切る、たれに漬ける、混ぜるなどの行為は「軽微な加工」とされ、製造には含まれず、これらを行った商品を販売しても二種に該当します。

 

●宿泊施設

・宿泊料金 ⇒ 五種

・宿泊施設内のレストランでの飲食 ⇒ 四種

・ルームサービスによる飲食 ⇒ 四種

・客室冷蔵庫での飲み物の販売 ⇒ 四種

・自動販売機(ジュース、コーヒー等)や売店の売上 ⇒ 二種

・ゲームコーナーでのゲーム代 ⇒ 五種

飲食や客室冷蔵庫での販売について宿泊料と区分されていない場合は、一律で五種と扱われてしまい税額計算上不利になりますので、金額を分けて管理する必要があります。

 このように一つの事業を行っていても、売上の内容により区分が異なるケースがあるので注意が必要です。

 

【本則課税と比較しての有利判定】

 事業区分の判定に難しいところがあるとはいえ、簡易課税制度による計算は、本則での消費税の計算と比較すればシンプルです。ただ、どちらの方法が有利かというのは会社の状況により異なりますので、その期が始まる前にシミュレーションを行う必要があります。通常は簡易課税での計算が有利であっても、

・高額な固定資産の購入予定がある

・原価率が急激に上がる

などの要因により、有利不利が変わってくる可能性があります。また、一度簡易課税を選択すると2年間は継続適用が義務付けられるなどの縛りもあるので、慎重な判断が求められます。

 

【インボイス制度における税負担軽減措置】

令和5年10月1日からインボイス制度が開始します。このタイミングで、今まで消費税の免税事業者だった事業者が、課税事業者になるケースが多くあるかと思います。この場合において、簡易課税制度の計算方法による、税負担の軽減措置があります。

適用要件は以下の3つになります。

①インボイス発行事業者の登録を受けていること

②仮にインボイス発行事業者の登録がなければ、事業者免税点制度の適用により消費税の納税義務者とはならないこと

③課税期間の短縮特例の適用を受けていないこと

 これら①~③を全て満たすと、納税額を売上に係る消費税額の2割(つまり、簡易課税制度における第二種事業と同じ扱い)とすることができます。業種によってはかなり有利になるはずです。

 適用期間は、令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日に属する各課税期間で、この措置については、税務署への事前届出は不要となります。ただ、令和8年10月1日以降に簡易課税制度を適用する場合は、簡易課税制度選択届出書の提出が必要です。

(文責:関内本店 吉川学)

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