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朝日だより

“有限会社”という会社(朝日税理士法人だより資産税版Vol.159)

2024年02月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

<はじめに>

有限会社という会社、最近あまり聞かなくなったと思いませんか?

実は、2005年には190万社ほど存在していましたが、2020年には150万社にまで減っています。この数字には実際に営業していない会社(休眠会社)まで含まれるので、実数としては100万社を割る程度までになっているのではないでしょうか。

ここまで減った理由は1つ。それは、会社法施行に伴い有限会社法が廃止され、2006年以降に新設する会社では有限会社を選べなくなったから、と言えるでしょう。

つまり、既存の有限会社が廃業すればその分減っていくということです。

<会社法による大改正>

既存の有限会社は、「有限会社」という看板こそ維持されますが、会社法上は株式会社と同じ分類となり「特例有限会社」として、株式会社と同様に扱われます。

よって、有限会社でも「株主総会」が決定機関となり、出資者は「株主」と呼ばれることになりました(法令の一部において適用の違いはありますが大した違いではありません)。

有限会社という呼称だけは強制的に廃止せずそのまま残されています。

<株式会社と有限会社のちがい>

昔の株式会社は設立時において、資本金1000万円以上、取締役3名以上が必須条件であり、これを満たすのが難しい会社は有限会社を選択する方向にありました。

つまり、設立規模が大きい会社は株式会社へ、小さい会社は有限会社へと方向づけされていた訳です。ところが会社法施行により、資本金制限が撤廃され、1円でも設立が可能になりました。取締役は1名でも可となり、小さい株式会社が可能となりました。そうなると、有限会社の存在意義

 

もなくなり、新設廃止という運びになったのでは、と想像できます。

有限会社の出資者は株主と呼ばれることになりますが、これは会社の所有者・経営者であること、出資した限度でしか責任を負わないことも株式会社の株主と同じであるため問題はありません。

両者の違いは、大まかに言えば社員権を表象する株券と言う有価証券を発行できるか否かの違いしかありません。現代においてすすむペーパーレス化、電子化の移行に伴い、株式会社においても株券の不発行が一般化され、もはや発行している会社はほとんどないという現状があります。そうなると増々区別する理由はないですね。

<有限会社のメリット>

会社法施行以降、廃業に加えて、有限会社から株式会社に変更登記する会社もあり、その数は減り続けています。絶滅危惧種となるのは間違いないように見えますが、一方であまり知られていないメリットもあります。役員任期を設定しないことによる改選(重任)登記の省略ができたり、毎年の決算公告義務が課されないといったランニングコスト面でのメリットがあります。更に、「老舗」というブランド感や希少のプレミア感もメリットと言えるかもしれません。

このあたりが注目され始めれば「有限会社」の法人格売買が流行りはじめ、ある一定数以下には減少しないのではないかとも思ったりもします。例えば、新規で株式会社設立するよりも有限会社を買って新会社としてスタートするという選択もあるかもしれません。

<さいごに>

昭和レトロというワードが若い人の間でも話題になる、ときにおしゃれに映る昨今です。

正に昭和を生き抜いた「有限会社」には、このレトロ感や哀愁を個人的には感じます。

このまま無くならないで欲しいと思いますね。

文責:朝日司法書士法人 山口亮二

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