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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 何もしないと受けれない者、受けれると思ったのに受けれない者、受けたくないのに受けてしまう者・・それぞれの悩みのお話 ◆

2024年5月20日 BLOG

Q: 定額減税が間もなく始まるね。

A: 始まるのはイイのだけど、かなりややこしいよ。

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【かなりややこしい?】

来月から定額減税がスタートします。

所得税にて30,000円、住民税にて10,000円の減税を行うものですが

・キチンと手続きをしないと減税を受けることができないケース

・定額減税を受けれると思い込んでいたのに受けれないケース

・受けたくない減税を一旦は受けなければならないケース

など、色々ややこしいケースがあります。

そのややこしい例をいくつか紹介します。

 

【何もしないと受けれない】

(小学生二児のパパの会社員Aさん)

・Aさん:「子供2人も定額減税の対象になりますよね」

「私はサラリーマンだから年末調整で税金計算を完結したいと思っています」

・税理士:「なることはなりますが、あることをしないと対象になりません」

・Aさん:「あることって、どんなこと?」

・税理士:「16歳未満の子供は、扶養控除の対象にならないから、月々天引きされる所得税や、年末調整の税金計算に使う『扶養控除等申告書』の控除対象扶養親族の欄に(通常は※)記載しません」

(※:一定の所得以下で住民税の非課税等を受ける場合は、記載するケースあり)

「そうすると、税金計算においてお二人のお子さんを扶養していることが確認できないので、定額減税の対象にすることができなくなります」

・Aさん:「それは困る」

「何か方法は無いの」

・税理士:「この場合は、定額減税のために特別に準備された『源泉徴収に係る定額減税のための申告書』や『年末調整に係る定額減税のための申告書』にお子さん2名の事項を記載し会社に提出すれば対象となります※」

(※『扶養控除等申告書』住民税に関す事項にあえて記載する場合も対象となります)

・Aさん:「そうなんだ、何もしなくても自動的に減税が受けれると思ってたよ」

「その申告書とやらに記載しないと受けれないのね、仕方ないな···早速記載して提出するよ」

 

【壁を越えていないのに受けれない(でも受けれる?)】

(150万円の壁ギリギリに抑えているBさん)

・Bさん:「150万円以下であれば、夫の扶養控除の対象になるので、夫の税金で38万円の所得控除を受けることができますよね」

・税理士:「配偶者控除という制度は使えませんが、配偶者特別控除という制度にて38万円の控除ができます」(ご主人の合計所得金額が900万円以下の場合)

・Bさん:「だったら、専業主婦と同じように私も定額減税の対象になりますよね」

・税理士:「残念ながら対象外です」

・Bさん:「どうして・・夫の『扶養控除申告書』に私の名前を記載しているわよ」

「さっき(Aさんのときに)この申告書に記載が無いから定額減税が受けれないって言ってたじゃないの」

「私のことは記載しているわよ」

・税理士:「Bさんの記載は『源泉控除対象配偶者』という欄です」

「これは、配偶者控除(例38万円)もしくは配偶者特別控除の満額(例38万円)を受けれる配偶者を記載する欄です」

・Bさん:「私はパート収入150万円の壁を越えていないのだから『配偶者特別控除』を満額(38万円)受けれるから記載しているのよ(同じ満額受けれるから記載したのよ)」

「同じ額を受けれるのだから定額減税たって同じように受けてイイじゃないの!」

・税理士:「配偶者が定額減税を受けるためには、その配偶者の合計所得金額が48万円以下という要件があります」

・Bさん:「合計所得金額って何?私は満額控除受けるためにパート収入を150万円の壁の前で抑えているからその要件とやらをクリアしているんじゃないの・・」

・税理士:「Bさんの場合、パート収入額から55万円を引いた額が合計所得金額になります」

「150万円(の場合)-55万円=95万円なので38万円を超えています」

「合計所得金額を38万円にするため=定額減税を受けるためにはパート収入の上限は103万円になります」

・Bさん:「なーんだ・・・パート収入の壁が近年103万円から150万円に上がったのに定額減税は昔の壁のままなのね・・・」

・税理士:「でも心配しないでください」「Bさんは定額減税受けれますよ」

・Bさん:「えっ?さっきは受けれないって言ってたじゃないの」

「どういうこと?」

・税理士:「ご主人の税金では定額減税できませんが、ご自身の年末調整や確定申告にて受けることが出来ます」

・Bさん:「えっそうなの」

「でも、定額減税前の税金が少なくて控除しきれない場合はどうするの」

・税理士:「その場合は、給付金として受け取ることができます」

・Bさん:「それならよかったわ」

「折角の制度だからしっかり減税や給付を受けたいものね」

 

【どうせ納税するのだから受けたくない】

(年収2,000万円を超えるCさん)

会社経営をするC社長の役員報酬は2500万円です。

家族構成は専業主婦の奥様と、小学生の子供2名です。

・C社長:「年収2,000万円を超えると『定額減税が受けれない』と聞いたけど」

・税理士:「年収2,000万円から給与所得控除額(みなし経費のようなモノ)※を引くと合計所得金額は1,805万円になります」

「この1,805万円を超えると定額減税を受けることができません」

(※:年収2,000万円の場合、給与所得控除額は195万円)

・C社長:「そうだよね、私の場合は受けれないよね」

「そこで、ひとつ聞きたいのだけど、会社の事務方より『社長(=私)の6月分の役員報酬の源泉徴収所得税から@30,000円×4名(私+妻+子供2名)=120,000円減税をするので、ご家族の名前を記載して下さい』と言われて、この用紙(申告書)を渡されたんだけど・・どういうこと(だって私は定額減税を受けることできないんでしょ)」

・税理士:「社長のような高額所得者は、定額減税の対象にはならないのですが、源泉徴収税額からの減税はなされるのです」

・C社長:「対象にならないのに、源泉徴収税額から減税になるって、どういうこと?何だかややこしいな」

・税理士:「そうですね、ややこしいですね」

「その理由を下記に説明します」

  1. 今回の減税は、国民に対しその経済的効果をなるべく早く与えたいという政治的判断を受け、国民の大半を占めるサラリーマンなどの給与所得者については、年末調整の時期(12月)や確定申告の時期(翌年3月)ではなく、6月支給の給与等から天引きされる源泉徴収所得税から順次減税するカタチで実施されます。
  2. この源泉徴収は、勤務先の会社が行います。定額減税は、扶養親族などの状況等に応じ計算が必要なので、これを行う会社にかなりの事務負担が生じます。
  3. そのような事務負担がかかる会社に対し「この人は、高額所得だから減税の適用外、この人は、今は高い給与だけど、もしかすると年内どこかのタイミングで給与が減るかもしれないから減税の適用あり」・・などの判断をイチイチしてもらうのは難しいとのことで、(イチイチ判断するのではなく)6月1日に在職する役員・従業員の全てから減税することになっています。
  4. よって、社長のような(結果)定額減税が受けれない方も、源泉徴収される所得税から一旦は減税されてしまうのです。

・C社長:「結果受けれないということは、源泉徴収所得税から減税された額は、確定申告の際に納税しなくてはイケナイんでしょ」

「だったら、最初から(源泉徴収税額から)減税なんてして欲しくないよ」

「うちの事務をしている経理担当者に『俺の分は減税するな』って言っておこうかな」

・税理士:「上記(4)で説明したとおり、それはできません」

・C社長:「でも私の場合、私の分と専業主婦の妻の分と、小学生の2人の子供分で120,000円にもなる」

「こんな額を一旦減税されて、確定申告の際に戻す(納税する)なんて嫌だな」

・税理士:「その点は大丈夫です」

「源泉徴収税額から減税されるのは30,000円で済む方法があります」

・C社長:「えっ・・そうなの」

「だってウチは、小学生の子供はもちろんのこと、妻も専業主婦で3人とも収入が無いから、私と合わて4人分(@30,000×4名)である120,000円になってしまうんじゃないの」

・税理士:「社長がもし、『ご家族の名前を記載して下さい』と言われて、渡された用紙(申告書)に奥様とお子さんのことを記載して提出したら120,000円になってしまいます」

「でも、社長のような高額所得者の場合、この提出をしなければ、奥様とお子様2名の分は源泉徴収税額からの減税の対象にはなりません」

・C社長:「そうなんだ」

「教えてもらってよかったよ」

「会社の役員と従業員は一律にこの用紙(源泉徴収に係る定額減税のための申告書)を提出するものだと思い込んでいたよ」

「これで、余計な減税が30,000円だけで済むので安心したよ」

 

【ややこしいですね】

現内閣の肝入りで導入された定額減税ですが、6月から実施することや、減税の対象となる配偶者や扶養親族が、所得控除の対象者と若干ズレることなどにより、ややこしくなっております。

国税庁からQ&Aなども出ておりますので、よく確認いただければと思います。

社員税理士 小竹勝

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