退職金はこれまでの努力や貢献の結晶で皆様の老後を支える重要な財源となります。
それなので退職金に係る税務の知識をこの機会に覚えていただきたいと思います。
ただ岸田政権下において2024年度税制改正では退職金の優遇課税を見直さなかっただけで、今後増税させる可能性があることは頭に入れておきたいところです。
■ 生前の退職金に係る税金や手取額の計算
所得税(現在は復興特別所得税も)及び住民税が課税されることとなります。
退職所得を計算し、その所得金額に応じ税金計算を行うこととなります。
ここでは勤続年数が5年以下の場合等は除いて説明いたします。(例外的計算方法があります。)
退職所得の金額=(退職金の額-退職所得控除額)×1/2
※ 退職所得控除額は勤続年数により計算方法が異なります。
① 勤続年数が20年以下の場合
40万円×勤続年数(1年未満の端数は1年に切上げ)
(80万円未満の場合は80万円)
② 勤続年数が20年超の場合
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
Ex.退職金の額が2,000万円で勤続年数が30年3ヶ月のケース
① まず退職所得控除額を算出する
800万円+70万円×(31-20)=1,570万円
② 次に退職所得を計算する
(2,000万円-1,570万円)×1/2=215万円
③ 下記税額速算表で所得金額に応じ計算する
215万円×20.210%-99,548円=334,967円
退職所得金額 所得税住民税合算税率 控除額
0円超195万円以下 15.105% 0円
195万円超330万円以下 20.210% 99,548円
330万円超695万円以下 30.420% 436,478円
695万円超900万円以下 33.483% 649,356円
900万円超1,800万円以下 43.693% 1,568,256円
1,800万円超4,000万円以下 50.840% 2,854,716円
4,000万円超 55.945% 4,896,716円
④ 退職金の税引き後の手取額
2,000万円-334,967円=19,665,033円となります。
■ 死亡退職金に係る税金
死亡退職金で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは相続税の課税対象となります。ただし、死亡退職金には非課税金額が設けられており次の計算式で計算
した金額までは課税対象から除かれます。
500万円×法定相続人の数=非課税限度額 となります。
(注1)法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
(注2)法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。
また、死亡後3年以内に支給が確定したものとは、次のものをいいます。
(1)死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
(2)生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
レアケースかもしれませんが、被相続人の死亡後3年を経過してから支給が確定したものについては、相続税は課税されず、遺族の一時所得として所得税の課税対象となります。
冒頭で述べさせていただいた通り、退職金は人生設計においても重要な役割を果たします。岸田政権下で退職金に係る税務を改正したい理由は、高齢化社会への対応、労働市場の流動化促進、公平な税負担の実現、企業の負担軽減といった多岐にわたる課題に対応するためと言われていますが、日本国民の多くのサラリーマンにとっては重要な事柄ですので、今後の方針には注視していただければと思います。
社員税理士 水谷 優