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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ どうする「インボイス制度」 ◆

2023年2月13日 BLOG

◆ どうする「インボイス制度」 ◆

Q:あと8ヶ月でインボイス制度が導入されるね

A:いつまで申請?免税事業者はどうすべき?請求書に消費税を計上していいの?など様々な疑問があるみたいだよ

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【いつまでに申請すれば良いの?】
今年の10月1日より、インボイス制度がスタートします。
この制度に伴い、自社が発行する請求書に「インボイス番号」を付す場合には、適格請求書発行事業者の登録申請(=当局よりインボイス番号を割り当ててもらう手続き)が必要になります。

Q:その期限はいつまででしょうか?
A:その期限は原則、令和5年3月31日でした。(これに間に合わない場合は「(間に合わすことが)困難な理由」を申請書に記載する必要がありました。
しかし、今般の税制改正大綱において令和5年3月31日に間に合わなくとも、これについて「困難な理由」を記載する必要はなくなる旨が明記されております。
よって3月31日に間に合わなくても大丈夫になりました。


【インボイス制度が導入されたらどうなるの(仕入れ側の会計処理)】
今日、多くの事業者において、その会計処理は会計ソフトを用いてなされています。
この場合、消費税にかかる会計処理は、課税区分というモノを選択してその処理を実施しています。

例えば、
・10%税率対象となる仕入れの場合=課税区分:「課税仕入10%」を選択

・食料品など軽減税率対象品の仕入れの場合=課税区分:「課税仕入8%」を選択
このように、課税仕入の場合は、その仕入れが10%税率のモノなのか、8%の軽減税率のモノなのかを明確に区別して選択する必要がありました。

これがインボイス導入後は、下記のような選択に代わると思われます。
・10%税率対象となる仕入れのうち、その請求書に「インボイス番号」が付いている場合=課税区分:(例)「課税仕入(適格請求書あり)10%」を選択
・10%税率対象となる仕入れのうち、その請求書に「インボイス番号」が付いていない場合=課税区分:「課税仕入(適格請求書なし)10%」を選択
・食料品など軽減税率対象品の仕入れのうち、その請求書に「インボイス番号」が付いている場合=課税区分:「課税仕入(適格請求書あり)8%」を選択
・食料品など軽減税率対象品の仕入れのうち、その請求書に「インボイス番号」が付いていない場合=課税区分:「課税仕入(適格請求書なし)8%」を選択


これまでのように「10%なのか8%なのか」といった税率別の選択以外にその仕入にかかる請求書に「インボイス番号があるのか無いのか」といったことも区別して選択する必要が生じます。
インボイス番号付きの請求書による場合は、その仕入税額控除はこれまでどおり行うことができますが、インボイス番号が付いていない請求書による場合は、これまでの控除税額の8割、3年後は5割しか控除出来ず、更にその先の3年後は、全額控除出来なくなります。
このように控除の取り扱いが異なるので、インボイス番号の有無についても区分して選択する必要があると解されます。

 

【仕入先にインボイス番号の取得を強要できるか】
前述のとおり、仕入先から受け取った請求書に「インボイス番号」があるか無いかにより、仕入税額控除額に影響が生じます。
インボイス番号があれば、これまで通り控除ができるので、仕入れる側にとっては、仕入先に番号を取って欲しいという気持ちが働きます。
このことから仕入先にインボイス番号の取得を要請することがあろうかと思いますが、これを強く強要すると下請法に抵触する場合があるので注意が必要です。
(詳しくは2022年7月12日BLOGをご覧ください)

 

【インボイス制度が導入されたら、電子保存が必須か】
仕入税額控除をするためには、原則として、受け取った請求書等を保存する必要があります。
請求書の保存と言えば、令和6年1月1日より「改正電子帳簿保存法」が実質的にスタートします。これにより、紙ベースではなく、電子媒体における請求書等の保存が本格化します。
消費税のインボイス制度が令和5年10月1日、電子帳簿保存法が令和6年1月1日と比較的近いタイミングで実施されることから、この2つは混同されるケースが多々あり、それ故「消費税インボイス請求書は紙ベースではなく電子媒体で保存しなければならない」と勘違いされる方が多くいらっしゃいます。
そこで、この2つを整理して説明させて頂きます。
(1)電子帳簿保存法に基づき、電子媒体での保存を必ず要求しているのは「電子媒体で発行された請求書等」です。(紙ベースのモノについての電子化は強要していません)
(2)消費税での仕入税額控除の要件としているのは「請求書の保存」という行為だけです。(電子媒体での保存を要件としていません)
(3)この2つを組み合わせて整理してみると、消費税の仕入れ税額控除の場合は、紙であろうが電子であろうが、保存さえしておけば、その要件は満たすが、電子帳簿保存法においては、その請求書等が電子媒体であれば電子で保存しなければならないということになります。
よって、インボイス導入のタイミングで、全ての請求書を電子で保存しなければならないということには(法令上)なっていません。

 

【免税事業者はどうするか】
適格請求書発行事業者の登録申請(=当局よりインボイス番号を割り当ててもらう申請手続き)をするためには、その前提として消費税の課税事業者であることが必要です。
よって、免税事業者は、そのままの状態では、得意先に発行する請求書にインボイス番号を付すことができません。
そうなると、自社からの仕入れについて得意先では「仕入税額控除」が徐々に出来なくなり、最終的には全く出来なくなる。
→仕入税額控除が出来ないことで得意先が敬遠し、取引に支障を来すのではないかという心配が生じてきます。
よって
(1)課税事業者になって(消費税納税を負担して)インボイス番号を取得するか
(2)消費税納税の負担は避けたい・・よって取引先との取引に支障を来すかもしれないが免税業者のままでいて、インボイス番号は取得しない
このどちらかの選択をしなければならなくなります。

 

【そんな選択は不要】
免税事業者の方から「インボイス制度が導入されるから、免税を辞めて番号をとらなくてはいけませんか」という質問をよく受けます。
その際、私は業種を聞きます。
もし、その業種が小売業など一般消費者を相手にする商売であれば
「インボイス番号は(原則)取得する必要は無いと思います」
このように回答しています。
その理由は、インボイス番号付きの請求書等は、消費税を申告する事業者が、その計算上税額控除をするために必要なモノである。
よって、問屋や製造業など、得意先が商売人(会社や事業者)であれば、消費税を申告している可能性が高いため、インボイス番号付き請求書は必要になると考えられます。
一方、一般の消費者は消費税の申告をしないため、これらを主な相手とする小売業などでは、インボイス番号はなくても相手は困らないと考えられます。

このように説明すると
「まれに『会社の経費にするので領収書をください』と言われるケースがあります」
「このような場合は、インボイス番号付きのレシートなどを発行する必要があるのでは?」と心配なさる方がおります。

そのような心配については
「例えば、そのようなお客様が100件に1件の場合
『ごめんなさい、当店は免税事業者なので、インボイス番号がありません。だから、ちょっと値引きさせてもらいますので、それでご了承願います』
このように説明して、値引きやおまけで対応しては如何でしょうか」
そのようなアドバイスを追加する場合があります。

その理由は、例のような100件に1件の場合、仮にその1件のためにインボイス番号の取得(=適格請求書発行事業者の登録申請)をすると、免税事業者でなくなってしまいこれまで負担せずに済んだ消費税についてその納税負担が生じてしまいます。
そうであれば、インボイス番号付きレシート発行に変えてその1件のお客様分につき多少の値引きをした方が経済的負担が極めて小さくて済むという考えによるものです。
ただ、最終的には、各事業者の判断になろうかと思います。

 

【インボイス番号がなくても請求書に消費税を記載することは出来るの】
インボイス番号が無い=免税事業者であると想定されるので
「インボイス制度導入後は、発行する請求書やレシートに消費税を記載してはイケナイのではないか」
と心配される事業者の方は多くいらっしゃるのではないかと思います。
これについて、消費税においてもNGの定めはなく、国税庁の通達においてもそのような取り扱いは示されてはいません。
それどころか、先に税率アップ(8%→10%)に伴い、食料品軽減税率8%とそれ以外の10%の2つの税率が存在することになり
「請求書やレシートには、この2つを区分して掲載しなければならない」
という規定があることから、消費税については請求書等において積極的に示す必要性があります。
このようなことから、免税事業者においてインボイス制度導入後も発行する請求書等に消費税を計上することは出来ます。

 

【それでも国は1つでも多くの免税事業者にインボイス番号を取得して欲しい】
・100社に1社(例)に対し、値引きをすることで、インボイス番号の取得が回避(課税事業者になることを回避)することが出来るかもしれない。
・免税事業者であっても、請求書に消費税を記載することができる。
例え、このようなことであっても、国としては、1つでも多くの免税事業者にインボイス番号を取得してもらい、消費税の納税義務者になって欲しいと願っています。
その理由は「益税の撲滅」です。
益税とは、消費者が負担した消費税が事業者の財布に留まり、税収として国等に入ってこないことを言います。
免税事業者が「消費税」と称して、得意先や消費者から得たお金は、まさに益税の塊になります。
よって、消費税の世界から免税事業者を無くしてしまえば、益税が生ずる原因の大半を潰すことができます。
その切り札が、インボイス制度の導入であると解されます。
ただ、免税事業者はその大半が中小零細事業者で、資金や人手が少ないところが殆どで、この負担(資金的負担、手間の負担)を解消しなければ、(免税事業者に対する)インボイス導入は進みません。
そこで、その負担を少しでも緩和するために、この度の税制改正大綱に下記のような制度が明記されております。(その内容をザックリ分かり易く記載すると下記のようなカンジになります)
「免税事業者がインボイス番号を取った場合、消費税の申告計算は、とっても簡単に出来ますよ。」
どのように簡単なのかというと、イメージ的には
「年商の2割部分に消費税率を乗じればそれでOK」
こんなカンジです。
消費税の申告税額は、売上高にかかる消費税から、仕入にかかる消費税をとても複雑な計算をして控除するカタチで算出されます。
それが「(例)年商の2割部分でOK」なんてことになれば、その計算はとっても簡単になります。
また、業種によっては、たった2割部分だけで済むというのはとってもお得な計算になる場合もあります。
このような制度を準備して、国は免税事業者を少しでも減らそうと思考錯誤しているカンジです。

今回は、あと8ヶ月ほどで導入されるインボイス制度のあれこれをご案内してみました。各事業者の皆様の参考になれば幸いです。


(文責:社員税理士 小竹 勝)

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