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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ うちには関係ない? ◆

2023年11月13日 BLOG

◆うちには関係ない?◆

Q:うち(当社)は得意先などと電子取引してないから電子帳簿保存法は関係ないな

A:そんなこと言って本当に大丈夫ですか

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【うちには関係ない】

「○○奉行にお任せあれぇ~」とか「●●精算」など、会計経理ソフトの宣伝をよく目にしませんか?

それは、会計経理ソフト業界では、かつてない『特需』を迎えているからです。

その一つは、先月の10月1日に導入された『インボイス制度』

そしてもう一つは、来年1月1日より本格的に実施される『電子帳簿保存法』

この二つが特需の理由です。

 

「インボイス制度については、色々準備や検討をしたけど、電子帳簿保存法は、うち(当社)には関係ないや」・・中小企業を経営するA社長は、このように考えていました。

 

筆者:「何故そのように考えるのですか」

 

A社長:「だって、うち(当社)が商売をする業界は、職人中心だから、ネットで請求書を発行(発送)したり、仕入先や外注先からネットで請求書を受けることはほぼ無いんだよ」

「ペーパレスが叫ばれているけど、うちの業界は、いまだに紙文化なんだ」

 

筆者:「たしかに、そうですね。御社が発行する請求書はコクヨの複写手書きの請求書ですし、外注から受け取る請求書はExcelなどで作成郵送されてくるものばかりですね」

 

A社長:「そうだろ。昔ながらのやり方で、いまどきのペーパレスからは程遠い業界なんだ」

「だから電子帳簿保存法なんて、当社には関係ないでしょ」

 

【うちには関係あるかも?!】

筆者:「次の中で当てはまるモノに(〇)を付して下さい」

(  )ネットサイトにて出張などの交通チケットを購入することがある

(  )タクシーを仕事で利用する際「Go」を利用することがある

(  )ネット通販で、仕事に必要な備品などを購入することがある

(  )インターネットバンキングを利用している

 

A社長:「馬鹿にするなよ・・いくら昔ながらのやり方(経営)をしているからといっても、これ位のことは、うち(当社)だって、やっているよ(利用しているよ)」

 

筆者:「そうですか・・そうなると、御社は電子帳簿保存法に関係あるかもしれませんよ」

 

A社長:「えっ!何だって?(関係あるの?)」

 

【「あるかも」じゃなくて「関係ある」】

筆者:「ネットサイトで交通チケットを購入する際、領収書などはどうしていますか」

 

A社長:「どうするって、サイトの領収書発行ボタンをクリックして、表示された領収書画面を印刷して、うちの奴(経理担当の奥様)へ渡しているよ」

「Goも同じだな・・運転手さんは領収書くれないから、クリックして表示されたやつを印刷しているよ」

 

筆者:「経理担当の奥様、ネットバンキングの入出金明細はどうしていますか」

 

経理担当妻:「画面で印刷ボタンをクリックして表示されたモノをプリントアウトしているわ」

「銀行からの紙での明細は郵送されてこないから、プリントアウトした明細を見ながら、帳簿を付けているのよ」

 

筆者:「そうなると、関係しちゃいますね・・電子帳簿保存法に・・・」

 

【関係ある・・何とかならない?】

A社長:「そっか・・得意先や仕入先との請求書などのやり取りが、ペーパーであっても、ネット購入チケットやネットショップでの備品購入、そしてネットバンキングなどを利用していると関係あるのか」

「でも、関係あるって言われても、売りや仕入など、当社の基幹的な商流は、紙ベースだから、たまに使うネット購入やネットバンク程度のことで、大掛かりなシステムや管理ソフトを導入するのは避けたいな(だってイイ値段するんだろ)(それに使い方も面倒そうだし)」

 

筆者:「そうですか、それでは一番簡単な方法をお教えしましょう」

 

【簡単な方法】

今回、取り上げているのは電子帳簿保存法のうち『電子取引データの保存』というモノです。

これは、電子で発行された請求書や取引明細などについて来年1月1日以降(原則)電子で保存することが義務付けられる制度です。

その保存に際しては、大きく分けて二つの基準があります。

 

一つは、改ざん防止に関する基準

そしてもう一つが、検索機能を設ける基準(=税務調査の際、税務署側が確認したい電子請求書などの電子データを検索出来るようにしておかなければならないという基準)

 

この二つの基準をクリアするためには、JIIMAという認証を得たソフトを導入するのが一番手っ取り早いです。

 

でも、御社のように、本業の商売での売り買いにおいて電子化は進んでおらず、電子取引は稀に利用するネット購入やネットバンク程度であり、上記のようなソフトを導入することが馴染まないときなどは、下記の(簡単な方法で)対応が出来ます。

 

まず、電子画面の領収書やネットバンクの入出金明細をプリントアウトしてキチンと整理して(紙ベースで)保存する。

それと同時に、これらの元データ(電子データ)はPDF化して保存しておく。

これで一先ずOK

 

【でも気を付けて】

A社長:「えっ・・これだけでイイの?」

「電子データとして保存するときは、そのファイル名に『日付』『取引先名』『金額』などを付ける必要があるから大変だって・・同業仲間の社長が悩んでいたのを聞いたんだけど」

 

筆者:「原則はそうなんですが、電子化に対応出来ない中小企業などがまだ多くある現状を鑑み、このような簡単な方法(紙でプリントアウトして整理して保存+電子データは削除せず保存するだけの方法)を当面認めるようです」(認められるケースの詳細は下記※参照)

 

A社長:「そうか!こりゃー助かった」

「一先ず、この方法で行こう」

 

筆者:「ただ1つだけ気を付けることがあります」

 

A社長:「気を付けること?」

「それは、どんなこと?」

 

筆者:「税務調査などに際し、税務署側が『データーを下さい(ダウンロードさせて下さい)』と言われたら応じなければならないということです」

 

A社長:「ダウンロード・・・うーんちょっと嫌だけど、でも、システムを導入したり、面倒なファイル名(日付、取引先、金額)をいちいち付けることを考えれば・・まーぁ仕方ないか」

 

※          例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件(改ざん防止に関する要件や検索機能を設ける要件)に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、一定の環境が整うまでは、これら要件が不要となります。

(文責:社員税理士 小竹 勝)

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