一部の報道によれば、政治の世界における、パーティー券収入のキックバックなどが、政治資金規正法を根拠とする収支報告書に記載されていないことで、脱税の可能性があるのではないかとか、政治家のパーティー券収入は非課税なので問題ないが、非課税であることが看過できないなどといったコメントを聞いた記憶があります。いったい何が本当なのでしょうか。
政治資金規正法によれば、政治資金パーティーを開催した場合には、開催したパーティー毎に、その収入した金額を収支報告書に記載しなければならないようです(政治資金規正法第9条第一項一号へ)。また、政治資金パーティーは政治団体によってのみ、開催が認められていて(政治資金規正法第8条の2)、個人での開催は認められていないようです。ただし、その政治資金パーティーは、収入金額から必要経費を差し引いた残額をそのパーティーを開催した者またはそれ以外の者の政治活動のために支出されなければならいようです(政治資金規正法第8条の2)。ということは、パーティー券収入のキックバックは政治資金規正法が予定する分配方法とは異なるので、政治資金規正法の枠外の行為のように感じられます。一般の社会では、着服なのではと見る人がいるかもしれません。
翻って、所得税の世界では非課税となる収入が所得税法にて定められています。政治の世界に限って言えば、選挙活動のために受けた収入は非課税となります(所得税法第9条第一項18号)。パーティー券収入のキックバックは、報道によれば政治家個人が受け取っていたことになっていて、選挙活動に直接関係があるかどうか不明瞭なので、少なくとも非課税の収入ではなさそうです。従って、一般の市民と同様に所得税の課税がされます。ちなみに、違法行為による所得でも所得税は課されます(所得税基本通達36の1)ので、仮に着服だったとしても所得税は課されることになります。この時の所得の種類は一時所得か雑所得が想定されますが、政治資金パーティーが一年に何度も開催されていると雑所得が相当のような印象です。雑所得となれば、収入金額(キックバック額)からその収入を得るために要した費用を差し引いた金額に税率を乗じて税額を計算することになります。正当な物品による寄付や政党などからの寄付金も雑所得になり、秘書などの人件費も控除することができるのですが、キックバックを得るために必要な経費がどんなものか、ちょっと思いつきません。
元も子もない話ですが、政治資金規正法による収支報告書は、税務申告書類ではありません。この収支報告書に記載があっても無くても、税務申告書類において適正に処理されていれば、税務については、何も問題はないことになります。個人の税務申告書類は、政治資金規正法の収支報告書のように開示されることはありません。報道関係者が本人以外から、税務申告書の内容を確認する術は無いのです。あまり、極端な報道は控えるべきだろうと思いながら、矢面に立たされている政治家の皆さんの税務申告書が適切であったことを期待します。
社員税理士 半田茂