1.小規模宅地等の特例とは?
「小規模宅地等の特例」とは、相続税における特例の中でも頻繁に利用され、相続税額に大きな影響を与えるものです。当社がお手伝いする相続税申告でも、この特例を適用しないケースは稀であり、一般的によく利用されます。おそらく、多くの方がこの特例についてご存知かと思います。
簡単に説明すると、この特例は「被相続人が住んでいた土地や、事業を行っていた土地について、一定の要件を満たす場合には、その土地の評価額を80%減または50%減にする」というものです。
2.特例適用に当たっての注意点
特例を適用する際には、以下のような注意点があります。
①相続税申告書を提出しなかった場合
相続税の計算を相続人自身で行った場合には、注意が必要です。特例を適用して宅地の評価額を下げたことにより、他の資産も含めた相続財産全体の価額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を下回った場合でも、相続税申告書の提出が必要です。特例の適用を受けるには、申告書の提出が必須となります。
②賃貸建物の空室を放置していた場合
貸付事業用宅地等に関する注意点です。例えば、被相続人が4室のアパートを経営しており、そのうち2室が空室となっていたとします。このような状況のまま相続が発生してしまった場合、原則として空室の部分については小規模宅地等の特例の適用対象外となります。
さらに、貸していない部分については、自用地(貸している部分は貸家建付地として評価減あり)扱いとなり、減額の対象外となってしまいます。そのため、二重に税額が増えてしまう可能性があります。このような事態を避けるためには、相続発生前から空室を埋めるための行動を継続して行う必要があります。
例えば、不動産会社にテナント誘致を依頼するなどの対策を取ることが重要です。
③そもそも宅地ではなかった場合
「小規模宅地等の特例」という名前からもわかるように、この特例は宅地にのみ適用されます。宅地とは、一定の建物や構築物の敷地として使用されている土地のことを指します。
例えば、なんら整備をせずに青空駐車場として賃貸していた場合などは、土地上に建物や構築物が存在しないため、宅地には該当せず、特例の適用も受けることが出来ません。
特例の適用を受けるためには、構築物の設置が必要です。具体的にはアスファルトを敷くなどの方法が考えられます。
④特例選択地の有利・不利
特例選択には有利・不利があります。被相続人の所有地のうち、複数の宅地で特例が適用できる可能性がある場合、どの土地で特例を適用するかを申告の際に選ぶ必要があります。例えば、特定居住用宅地等に該当する宅地等で特例を適用する場合には330㎡まで80%減額、貸付事業用宅地等に該当する宅地等で特例を適用する場合には、200㎡まで50%減額、と選択する宅地によって限度面積や減額割合が変わってきます。申告書を提出する際に一度選択した土地について、後から変更したいと考えても、当初申告の際に適法に選択している場合、基本的には変更は認められないので、慎重に選択する必要があります。
3.おわりに
小規模宅地等の特例については、相続税評価額が最大80%減額されることもあり、適用の有無が相続税額に大きく影響します。
小規模宅地等の特例の適用には様々な要件があり、適用の判断が困難なケースもあります。
ご自身の資産に関して、ご不明な点がございましたら、朝日税理士法人へお気軽にご相談ください。
(文責:河野京美)