NEWS FROM ASAHI

朝日だより

相続税の申告は誰がするの?全員?別々?(朝日税理士法人だより資産税版Vol.155)

2023年10月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

【相続税の計算方法】

 相続税は、他の税目と違い特殊な計算方式を採用しています。すべての相続人が取得した相続財産の価額を合計して全体の課税価格を計算し、その課税価格に対する相続税総額をいったん求めます。その後、相続税の総額に、各相続人の財産の取得割合を乗じることで、相続人毎の相続税額が算出されます。

 このように、相続人毎の相続税額を算出するためには、被相続人の財産・債務を漏れなく把握しなければなりません。

 相続人が複数名いる場合、すべての相続人が一つの相続税申告書を作成し、共同で提出するのが一般的です。

 しかし、相続人同士の関係が良好でないなど、様々な事情によって共同で申告書を提出できないこともあります。

そのような場合には、各相続人がそれぞれ別々に相続税申告書を作成し、税務署に提出することもできます。

 

【相続人毎に別々の申告書を作成するデメリット】

税務調査の可能性が高まります。

 本来、同一の被相続人の申告書に記載される財産内容および相続税評価額は一致するはずです。

しかし、相続人毎に別々の申告書を作成する場合には、それぞれが各々に資料収集をするため、相続人Aが持っている資料や情報をもう一方の相続人Bは知らない等、財産の把握漏れが起こる可能性が高まります。

また、財産の評価額の計算についても差異が生じる可能性があります。

金融資産や上場株式、投資信託等は相続開始時点の残高で計算されるため、金融機関が発行する残高証明書を参考にすれば、基本的には誰が計算しても同じ評価額となります。

一方、土地や非上場株式等は、評価する人の解釈によって評価額に差が生じる可能性が高い資産です。

 相続人がそれぞれに違う税理士に依頼する場合も同様に、評価額に差が生じる可能性は残ります。

同一の被相続人に係る相続税申告において、異なる財産内容や異なる評価額の申告書が税務署に提出された場合、それぞれの申告内容のズレを確認するために税務調査が行われる可能性が高まります。

税務調査にはならないまでも、それぞれの申告内容のズレのすり合わせが必要になりますので、税務署とのやり取りが必要になります。

場合によっては追徴課税の可能性もあります

税務調査の結果、相続財産の計上漏れや、計算の誤りが発覚し、申告した税額が本来の税額より少なかった場合には、追徴課税がされてしまうことも起こりえます。

税理士報酬が余計にかかります。

相続人全員が共同で一人の税理士に依頼すれば、税理士報酬を共同で支払うことができます。ですが、各々が税理士に依頼した場合、それぞれ別々に報酬がかかりますので、全員共同で申告するよりも全体的にコストがかさみます。

 

【最後に】

相続人同士の争いがあり、共同で申告書が提出できないときは、必要以上の税負担や作業、余計なコストがかかってしまうこともあります。

一番は相続人同士の円満な関係構築が望ましいですが、ご不安がある場合には、遺言書作成や生前の財産の洗い出しなど事前準備をすることが大切です。

対策はお元気なうちにしかできません!

少しでもご不安なことなどがありましたら、朝日税理士法人へお気軽にご相談ください。

(文責:小田原事務所 清田和男)

カテゴリー

月別アーカイブ