9月号の朝日だより「電子帳簿保存法の改正」でご案内いたしました、請求書等の保管方法の改正が2022年1月から適用されます。法人個人を問わず帳簿書類の保管方法が大きく変わることになります。
主な改正内容は9月号にてふれましたので、今月は具体的な保管方法についてご案内いたします。
【ポイント】
① 紙以外の電子データで受領した請求書、領収書等については、そのデータのまま保管しなければなりません。
② 電子データの保管方法に注意が必要です。
③ 電子データについて改竄できないこと、検索できること、を担保しなければなりません。
下記、各々の詳細をご説明します。
【① 紙以外で受領した場合はデータ保管が必要】
帳簿(売上帳や売掛金元帳、仕入帳など)と、裏付けとなる書類(請求書や領収書、契約書など)は、保管が義務付けられています。
近年、メールやホームページ、クラウドサービスを利用して、電子データ化した請求書等の書類のやり取り(電子取引)が増えています。
従前はこの場合でも紙で印刷して保管が必要でしたが、今後は印刷せずにデータのまま保管することになります。
ただし、保管方法にも決まりがあり、要件をクリアできない場合は、紙の請求書を「正」の請求書として改めて発行してもらわなければなりません。
【② 電子データの保管方法】
紙以外の電子データ化した請求書や領収書等を保管する場合は、取引の種類に応じて保管方法が決められています。これは、受領した請求書や領収書だけではなく、送付した売上の請求書や領収書にも適用されます。
<Case1:メールで送付・受領>
請求書や領収書等をメールで送付または受領した場合、メールに添付された電子データをサーバ等に保管します。
なお、メール本文に請求書等に係る取引情報が記載されている場合、その内容も請求書等の書類の一部とされるため、メール自体をサーバ等に保管しなければなりません。
<Case2:ダウンロード形式で送付・受領>
PDFなどのファイルとしてダウンロードできる場合と、データ表示される場合があります。
前者の場合はダウンロードしたファイルを、後者の場合は表示された画面をスクリーンショットで保管、または、その画面からPDF等に変換して、サーバ等に保管します。
<Case3:クラウドサービス経由で送付・受領>
クラウドサービス自体を保管場所として利用できる場合は利用して構いません。ただし、保管期限がある場合、ダウンロードしたデータをサーバ等に保管することも必要になります。
【③ 電子データの改竄防止と検索機能】
受領したデータの改竄防止のため、編集や削除があった場合はその記録をすべて残すことも必要です。これはタイムスタンプで対応可能ですが、タイムスタンプ導入にもコストがかかりますので、まずはデータ管理に関する事務処理規定を整備することをお勧めします。
また、保管された電子データについて、取引年月日、金額、相手先を条件に検索ができることも必要です。取引情報データを保存できるシステムがない場合、Excelなどを利用して各電子データについての一覧を作成できれば問題ありませんが、漏れがないよう運用しなくてはなりません。
改竄防止を担保する意味でも、今後はデータ保管に対応したシステムの導入を検討する必要が出てくるかもしれません。
2022年1月以降、保存要件を満たさない形で電子データを保管した場合、青色申告の承認取り消しの対象にもなりえます。
青色の承認が取り消された場合、欠損金の繰越控除、欠損金の繰り戻し還付、30万未満資産の全額損金算入(中小企業者等限定)といった特典が受けられなくなりますのでご注意ください。
ご不明な点ございましたら、朝日税理士法人担当者までお問い合わせください。
(文責:関内事務所 広瀬奈緒子)