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朝日だより

いよいよ始まる相続登記義務化について~注意すべきこと~

2024年02月26日 相続税・贈与税

令和6年4月1日より相続登記が義務化されます。
テレビ・ネット・新聞等を通じてお聞きになった方も多いかと思います。
これは誰にでも関係しうる問題であり、司法書士としては広く世間に周知しなければいけない責務を負っています。
そこで、もう一度おさらいしてポイントをおさえておきましょう。

 

今までは不動産の名義人が亡くなり相続が開始しても名義変更せず過ごせました。
それは特段、誰の問題にもならなかったからとも言えます。
実際に数年~数十年前に亡くなった方名義の不動産を仕事で扱うこともよくありました。
それが今般、義務化されることになりました。
理由としては、誰の問題にもならなかったものが問題になってきた、という社会情勢の変化によるところが大きいと思っています。
「所有者不明土地問題」というのを聞いたことありませんか?
通行の安全を妨げる空き家とか管理されないままの崖などの危険私有地等はニュースでもしばし取り上げられますね。あれに代表されるように、所有者が不明なため行政指導が困難で近隣住民の身の危険となるものもあれば、都市開発で道路拡張や治水工事などを行いたくても所有者不明なため計画がすすまないという近隣住民の環境に影響を及ぼすものもあります。
その土地所有者が不明であるとこうした諸問題が発生することになります。
少子化・人口減少により今後ますます不明土地が増加することを想定して、ここで義務化となった、ということでしょう。(所有者不明土地の総面積は九州の土地面積を超えていることが国交省の報告にもあります。)

 

さて、そんな義務化となる相続登記ですが、内容をおさらいします。

 

相続により所有権を取得した者は、相続の開始のあったことを知り、且つ、当該所有権を取得した日から
3年以内に登記をしなければならない。(不動産登記法第76条の2)

 

ここで注意すべきは、「当該所有権を取得した日」は遺産分割協議で相続する人が決まったとき、とはならないことです。協議期間中は法定相続分で共有した状態で既に相続しているとみなし、期限はスタートしていると解釈されます。よってほとんどの人は家族より、病院より死亡の報告を受けたときから3年以内ルールがカウントされます。
これが、4月1日以降に開始する相続人について適用されます。では、相続登記せずに放っておいたままの方はどうなるかと言えば、この施行日から3年以内に、つまり令和9年4月1日までに登記すればよいことになっています。
(数十年前の相続でもすぐにアウトとはなりませんのでご安心を)
ちなみに、初めからもめる事が想定される相続事案もあり、3年以内に決着するのが難しい場合は、その申出により一時ストップできる仮の手続きもありますので、詳しくはお近くの法務局もしくは司法書士にご相談下さい。

 

次に、義務を守らなかった場合の罰則について確認します。

 

正当な理由がないにも関わらず3年以内に登記申請をしないでいると、10万円以下の過料の対象となります。(不動産登記法第164条第1項)

 

ポイントは、「過料の対象となる」だけで「過料に処せられる」とはなっていないことです。
法務省発表の「施行に向けたマスタープラン」によれば、違反者には催告がされ、それに従わない場合は裁判所へ通知がされ、その後裁判所から過料制裁通知が届くようです。
つまり、期限経過違反によりすぐに過料制裁となる訳ではないようです。
個人的には過料金の規模を含め、ずいぶんと緩い断罪とも感じますが、当初は法の整備ができたこと、義務化できたことを第一の目的と考えている様にも感じます。国民の自発的な登記申請を促しつつ不安を与え過ぎないように慎重に運用していくということでしょうか。まずは今後の成果を見定め、あまり効果がないとなれば第二弾として厳しい断罪の制定も将来はあるかもしれません。

 

とにかく、遺産に不動産がある場合は注意して下さい。自宅や実家は想像できますが、田舎の田畑・別荘地・リゾートマンション・バブル期に取得したままの土地なども全部含みます。

 

相続登記をしないといけないこと・期限があることだけは知っておきましょう。

 


朝日司法書士法人 山口亮二

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