あなたが将来対面する相続には問題が潜んでないだろうか?
~遺産分割協議ができずに困る相続事例が増えています~
相続人間で協議し、だれが何をもらう、相続すると決めることを遺産分割協議と言いますが、その結果をまとめたものが「遺産分割協議書」となります。
協議書が無いと、銀行での預金解約も不動産登記名義の変更も協議内容どおりに処理できないため非常に重要な書類です。
遺産分割協議は相続人資格のある者全員が参加する必要があり、一人でも欠いた場合、その協議は成立したことにはなりません。また内容についても不承諾の者が一人でもあれば成立しません。
ところで昨今、相続人間の争いにより遺産分割協議がまとまらないという事例以外に、そもそも協議ができないといった事例を見かけることが多くなりました。
主な要因としては、社会環境の変化、高齢化の影響、家族関係の希薄化等々が挙げられます。
ここでは、そんな遺産分割協議ができない事例をいくつかご紹介し、将来の相続に向けて対策等心構えをしておいて欲しいと思っています。
♦遺産分割協議ができない典型例
①認知症や障害により意思判断能力を欠いている ②行方不明者がいる、音信不通 ③前婚との間で子がいる ④仲悪い、話し合いができる状況にない |
①認知症や障害により意思判断能力を欠いている
遺産分割協議なので当然に、各相続人に協議できる能力が必要です。ところが認知症等でその能力が欠如している方は原則できません。家族の方が代わりになりすましてもその協議は法的に無効とされます。つまり、協議ができない=遺産処分を思い通りにできないことにつながります。これを回避するには、遺言書の作成を生前にする、成年後見人を選任する等の手続きが必要になります。
②行方不明者がいる、音信不通
例えば、相続人の中に、数十年前に外国に移住して以来音信不通であるケースや他にも失踪したままの相続人(該当者)がいるケースなどもあります。この場合、①と同様に協議ができないため、遺産処理が滞ることが想定されます。これを回避するには、遺言書の作成が必須と言えます。
③前婚との間で子がいる
前婚との間の子は相続人に該当しますので、現在の夫婦間にも子がいる場合、その子同士が協議をする必要が出てきます。親の相続をきっかけに協議をする当事者の関係になりますので、特に今までお互いに面識がない場合、協議は難航することが予想できます。協議を設定すること自体も困難かもしれません。これを回避するには、遺言書の作成は必須です。
④仲悪い、話し合いができる状況にない
相続をめぐる争いは近年多くなっていると感じます。子同士は仲良くてもその配偶者等家族によって関係性が悪くなるのはよくあります。
この様な状況では協議のテーブルにつくことは困難なので、遺産処理のためには家庭裁判所による遺産分割調停を代わりにすることになります。裁判となれば時間はかかり心理的負担も弁護士等の経済的負担もかかることが想定されます。
これも一番の回避策としては遺言書を作成しておくことが大事と言えます。
このように、遺産分割協議ができないことで非常に困る相続がある、というのを現場で見てきました。相続は突然にやってくるものでもありますので、この機会に意識を持ち、自分の場合は大丈夫かどうか見直してみるのは大事な備えであると思います。
また①~④に例示した事案に共通した対策法である「遺言書の作成」はとても有効な対策ですのでぜひともご検討下さい。
朝日司法書士法人 山口亮二