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朝日だより

遺言無効確認

2024年04月22日 朝日弁護士法人

遺言は、遺言者の最後の意思として、最大限尊重されるべきものです。しかし、遺言者の死後、相続人間で、遺言が無効であるとして、その効力が争われるケースがあります。

遺言が無効となるケースは、まず、民法上の形式的要件を満たしていない場合です。普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、それぞれの形式的要件は次のとおりです。

自筆証書遺言の場合、遺言者が、遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自署し、押印する必要があります。なお、加除その他の変更については、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名し、その変更の場所に押印する必要があります。

公正証書遺言の場合、①証人2人以上の立会いがあったこと②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授したこと③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させたこと④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名押印したこと(遺言者が署名することができない場合、公証人がその理由を付記したこと)⑤公証人が、①乃至④の方式に従ったことを付記して、これに署名押印したことが必要です。

秘密証書遺言の場合、①遺言者が、遺言証書を作成し、これに署名押印したこと②遺言者が、①の証書を封じ、証書に用いた印章でこれを封印したこと③遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に②の封書を提出し、自己の遺言書であること並びにその筆者の氏名及び住所を申述したこと④公証人が、③の提出日及び遺言者の申述を諷しに記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印したことが必要です。なお、加除その他の変更については、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名し、その変更の場所に押印する必要があります。

このように遺言を作成する場合、ぞれぞれの形式的要件を十分に把握して、それに沿って作成をしていなければ、遺言そのものが無効になってしまいます。この点、公正証書遺言は、公証人よって作成されることから、その形式的要件を満たさずに無効となるケースは、そう多くはないと言えるでしょう。

もっとも、各形式的要件を満たしていたとしても、遺言の作成当時、遺言者に遺言能力がなければ、遺言は無効となります。遺言者が遺言の作成当時、認知症を患っていた場合、遺言者に遺言能力がなかったとして、相続人間で争いになるのが典型的な紛争例となります。なお、公正証書遺言として作成されている場合でも、遺言能力がなかったとして紛争に発展するケースは一定数、見受けられます。

この点、遺言能力とは、単独で有効に遺言ができる資格であり、遺言の内容及びこれに基づく法的効果を弁識、判断する能力をいいます。認知症といっても、その進行具合や症状は様々ですから、遺言者が遺言の作成当時に認知症を患っていたのだとしても、それをもって直ちに遺言が無効となるものではなく、遺言の内容、遺言者の年齢や具体的な心身の状況、遺言作成の経緯、遺言作成時の状況等の事情を総合考慮して判断されることになります。

遺言者が遺言を作成しても、形式的要件を満たしていなかったり、作成時に遺言能力が疑われる場合には、結局、相続人間で紛争になってしまう可能性が高いため、作成する際は、事前に専門家に御相談されることをお勧めします。


朝日弁護士法人 千葉梢

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